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2013.08.13 Tuesday

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2011.06.14 Tuesday

読書のススメ


 
帰りの電車。
向かいに座る少年は、汚れた膝小僧のわりに、
たいそう立派なお塾カバンを背負っていた。

小学4年生くらいかな。
これから塾とはお勤めご苦労、少年よ…と心の中で労をねぎらう。

少年はわき目も振らずDSをするでもなく夢中に読書に耽り、
無限に広がる活字の世界を楽しんでいるようだった。
君が見ているその世界へ私も連れてってーとぼけぼけ考えながら、
少年を夢中にするその本を見て、目を疑う。

「ナイフ」

これは夢か幻か?狐が横切った?黒猫につままれた?
膝小僧に汚れた靴。夕焼けの黄色い電車。
その光景は、まさに重松清の小説の中から飛び出してきた少年のようで
私のにやけ顔はしばらく止まなかった。
嬉しくって抱き合わないけど、こんなほっこりした出来事が転がっているなんて、
さすが西武線。

西武線は関係ないとして。

「ナイフ」の著者である重松清の小説に出会っていなければ、
私は本を読まずに一生を送っていた、と言っても過言ではない程、
最も影響を受けた小説家であり、その作品に幾度となく魂を揺さぶられた。
できれば死ぬ前に会いたい。(あと、シルベスタ・スタローンにも会いたい)

「ナイフ」を読んだのは、25、6歳の時分。
そもそも小説を初めて読んだのが24歳。

どうして幼いころからきちんと本を読まずにきたのかと、
この素晴らしい読書の世界を20数年も知らずに過ごした自分を責める半面、
大人になってから出会えてよかった、とも思えるべき読書の世界であった。

前置きが長くて本題を見失いそうだ。
あ、少年だ。

嬉しかった。
本を好きになったきっかけである重松清の作品を、
目の前の小さな少年が読んでいるのが、
何だかとても嬉しかった。

私はある程度大人であるから
「魂が揺さぶられた」等と言うのかもしれない。
だとすると、純粋モウコハンな小4男子が「ナイフ」を読むと、
一体どういう感情が芽生えるのだろうか?

私は気になって気になって仕方がなく、
このままでは夜もすやすや眠れないと思い、
よし!このまま少年の後をつけて読み終わったタイミングで感想を聞こう!
アイスでも食べながらーという考えに至る直前、
そんなことは「死ぬまでにしてはいけない10のこと」だと気付き、
何とか一命を取り留めた。

大方冗談、少し真面目な話。

彼が「ナイフ」を読み終えたとき、その瞬間、どんな顔をするんだろう?
こればかりは本当に興味があった。

重松清の作品は、ページを閉じたくなるほど衝撃的で、
嗚咽を催すほど残酷で
それでいて何故か、あったかい。

いじめと家庭の残酷な現実。

駅に到着した事も気づかず、
ホームで歩き読みするほど夢中になった世界の結末を
彼はどう受け止めるのだろう。


少年の読書感想は気になるところだが、でも多分それはさほど重要ではなくて、
本を手に取ったこと、それによって彼の心の引き出しが増えたことが大切なのだと思う。


ただ、「疾走」だけは、もう少し後から読んでくれな、少年。


私に本の楽しさを教えてくれたのは夫。
幼少から沢山本を読む少年だったようだ。
だから沢山の本を教えてくれるから面白い。


夫は言う。
「これを読んでいないお前が羨ましい」と、

これまた魂をくすぐる事を言ってくれる。









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